アルマティ(2003/03/11)
eawind
朝方、7時過ぎにアルマティ第一駅に到着する。旺さんや、焦さんはここで降りたので、自分も降りようとすると、車掌がもう一駅あるから待てという。しばらくして列車は再度発車し、数十分後にアルマティ第二駅に到着した。
表はタクシー運転手のおやじがたくさんいて、乗らないかと声を掛けてくる。列車の車内にまで入ってくる。これをかわして、ひとまず表通りまで出てみる。売店で地図を買って、目的の宿の所在を通りにいる人に聞いてみる。大体、めぼしはついたので、今度は行き方を探る。まずは、駅そばの両替所で中国元をカザフスタンテンゲに替える。
宿までバスで行こうかと思ったが、初めて着いた場所なので、よくわからない。バスは諦めて、駅の方へ引き返し、見た感じトルコ系のタクシーの運転手に宿の名前と場所を伝える。料金は30テンゲだと言っていた。トランクに手持ちの折畳式バッグを収める。助手席に乗り込み数分走って、宿の前に到着したという。100テンゲを渡すと、足りないという。聞くと、300テンゲだというので、ロシア語がまだまだの自分の聞き間違いかとしょうがなく300テンゲを払う。後ろのトランクの荷物を取ろうと、ドアを開けて外に出ると、急にタクシーが走り去る。突然の出来事に頭の中は真っ白になる。まっすぐの一本道を走り去るタクシーの姿がだんだん小さくなり、視界で捕らえることができなくなる。タクシーのプレートナンバーを覚えておけばよかったが、そんな余裕はなく、急発進するタクシーの後姿を眺めるだけしかできなかった。
腹立たしいが、ナンバーを覚えることはできなかったし、警察に行ったとしても言葉が通じず苦労するのは目に見えていた。それに、バッグの中は衣類とロシア語や中国語の辞書と教科書、その他雑貨類しか入っておらず、幸い貴重品は手持ちのリュックの中や、ポケット、それから首から下げたポスポート入れの中にあったので、これからの旅にそれほど支障はないと判断して、このまま泣き寝入りするしかなかった。思い返す度に腹立たしいが、盗んだタクシーの運転手も特に役に立つものが入っていないバックを盗んで、「何だ」と寂寥感を覚えていることだろう。
しかし、このタクシーの運転手が降ろした場所は、更に腹立たしくも宿を1ブロック行った先で、近くの人に宿の場所を聞かねばならない。まずは通りで掃除するおばさんに尋ねるが知らないという。裏手にある廃品回収上の青年に聞くが、自分の下手なロシア語で通じない。そうすると、小汚いおやじが出てきて、いろいろ聞いてくる。どうやら宿の場所を知っているようだが、どこから来たとか、何をしているといろいろ聞いてくる。自分が日本人だと伝えると、持っている手帳に下手な漢字を書いて、これおまえ判るだろと聞いてくる。少し中国語を勉強したことがあるようだ。そんなやり取りをして、宿の前まで案内してくれる。宿に着くと「マネー、マネー」とお金を要求してくる。しょうがないので持っていたコインのテンゲを数枚渡したら、納得して帰っていった。
この宿はゼルデといって、インターネットであらかじめ調べておいた宿だ。一日400テンゲと格安である。チェックインすると、二人部屋に通される。同室の人はカザフスタン人だそうだが、このときは部屋にいなかった。ひとまず、荷物を置いて、入国上必要な外国人登録というものをしに、旅行代理店まで行ってみる。宿のおばさんに聞くと、ここから歩いていけそうなところにある。住所はクルマンガジー通り33。アルマティの住所の探し方は簡単である。建物が面した通りの名前を元に、通り沿いに振られた番号を順々に探していけばよい。この辺りだろうという場所で、近くのお店に旅行代理店の正確な場所を尋ねてみる。しかし、なにやら今日は休みらしい。今日は月曜日なので休日とはなぜだろうと思うと、お店の人が今日は祝日なのだと教えてくれた。あとで知ったのだが、今日は国際女性デーという日らしい。日本ではそんな祝日はない。
次に赴く国をウズベキスタンにしようかロシアにしようか迷っていた。それなので、ひとまず、ウズベキスタン大使館にいってみる。10日ほどビザの取得に時間を要するとは聞いていたが、確認してみようと思った。しかしお昼休みでやっていない。待つのも面倒なので、宿に戻って休むことにした。外国人登録が終わっていないので、まだウズベクビザの取得もできない状態である。しかし、付いたばかりなので、ゆっくり決めればいい。部屋でひとり昼寝をしていると、カザフ人の同居人が帰ってきて、自己紹介をする。彼はタルガート君といって、いまは救急医療の医大生でアルマトゥイの病院に研修に来ているという。彼はとても親切そうできちんとした英語を話す。カザフスタンに来て早々、腹立たしいタクシー運転手やちょっとした案内に金銭を要求する訝しいカザフスタン人にばかり会っていたので、カザフ人に対する怪しげなイメージが彼のそぶりや品のいい言動を見て一新された。
そろそろ夕飯だったので近くのカフェに行って、スープと肉料理にパンとミルクティーでお腹を満たす。全部で700テンゲくらいだった。列車で会った旺さんから聞いてはいたが、中国の料理店に比べカザフのカフェで出てくる料理は少量で、値段も高い。それでも、味はすばらしいものだった。今日は朝から散々だったが、一日の最後に良心的な同居人にも出会え、美味しい料理を口にすることもできて、終わりよければすべて良しといったところだった。